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テレワークの普及や自宅でのエンターテインメント時間の増加に伴い、最適な椅子選びは日々の生産性と健康を左右する重要な投資となっています。一見似ているようで注目すべきポイントが全く異なるゲーミングチェアとオフィスチェアの違いについて、実在する人気モデルを例に挙げながら詳しく解説します。
設計思想の根本的な違い
ゲーミングチェアとオフィスチェアは、開発の出発点となる思想が決定的に異なります。
ゲーミングチェアは休息と没入を目的としています。レーシングカーのバケットシートをルーツとしており、身体を深く包み込んで固定することが得意です。高い背もたれが頭部までサポートし、ゲームの合間に休息を取ることに重点を置いています。体を固定し、その合間にリラックスして休むことを想定した設計となっています。
一方、オフィスチェアは集中と持続を目的としています。PC作業を行う人間が正しい姿勢を能動的に維持できるよう、人間工学に基づいて設計されています。Boulies OP180やエルゴヒューマン プロなどは、背骨の自然なS字カーブを維持させ、長時間の集中力を支えるための装置としての側面が強いのが特徴です。

形状とデザインの違い
見た目においても、両者は対極的な特徴を持っています。
ゲーミングチェアは背もたれが高く、頭まで包み込むようなハイバック構造が一般的です。バケットシート形状は体をしっかり受け止めて姿勢を固定するのに適していますが、派手なカラーリングや独特なフォルムが多く、インテリアの中で浮いてしまうこともあります。シックなデザインのモデルも存在しますが、全体的にはゲーミングを意識した目立つデザインが主流です。
オフィスチェアは背骨のS字カーブに沿った形状をしており、腰をサポートする機能が充実しています。シンプルなデザインやカラーが多く、リビングや書斎などの家庭のインテリアにも違和感なく馴染みます。背もたれの高さもローバックからハイバックまで選択肢が豊富で、オカムラ シルフィーのように日本の住環境に合わせた控えめなデザインも人気です。

リクライニング機能
リクライニング角度は、両者の設計思想の違いが最も顕著に現れる部分です。
ゲーミングチェアは、リクライニング角度が非常に大きい傾向にあります。Boulies Master RexやNinja Proは最大165度まで対応しており、椅子の上でそのまま仮眠をとることが可能です。深いリクライニング機能やフットレストなど、寝るための機能が充実しているのが特徴です。
対して、オフィスチェアは角度は控えめです。また、体重を感知して自動で強度を調整するロッキング機能や、好みの位置で細かくロックする機能など、作業中の微細な動きをサポートする調整機能が充実しています。リクライニングの目的が長時間の休息ではなく、作業中の姿勢変化への対応にあるためです。
ランバーサポートの構造的な違い
腰痛予防に不可欠なランバーサポートの構造も大きく異なります。
ゲーミングチェアの多くは、外付けのクッションタイプを採用しています。取り外しができて位置を変えられる利便性がある一方、使用中に位置がズレやすく、不適切な位置にあるとかえって姿勢を崩す原因になることもあります。腰を休ませるためのクッションとしての役割が強く、能動的な姿勢サポートには向いていません。
オフィスチェアは、内蔵式や調整式のランバーサポートが主流です。Boulies Master Rexのゲーミングモデルでも高級仕様のものや、エルゴヒューマンでは、背もたれにランバーサポートが組み込まれており、高さや奥行きを数ミリ単位で細かく調整して背骨にフィットさせることができます。強度や位置を調整できるモデルが多く、腰を安定して支え、理想的なS字カーブを維持します。

アームレストの可動性と設計
肘掛けの機能性も、用途によって異なるアプローチがとられています。
ゲーミングチェアは、腕を休ませるために上下、前後、左右、角度を調整できる4Dアームレストを搭載していることが一般的です。この4D仕様により、キーボード操作やコントローラー操作など、用途に合わせて肘の位置を最適化できます。ゲーム中の様々な姿勢に対応し、腕をリラックスさせることに重点が置かれています。
オフィスチェアは、作業内容に合わせた特殊な可動機能を持つモデルがあります。前傾姿勢でも後傾姿勢でも肘をサポートできるクランクスライドアームを採用している商品もあり、作業姿勢の変化に特化しています。肘掛けの有無を選んだり、キーボード入力時に最適な位置へスライドさせたりできる高度な可動アームが選択可能です。

座面の設計と座り心地の違い
座面の仕様は、疲労感に直結する重要なポイントです。
ゲーミングチェアの座面は、反発力が強く硬めの仕様が目立ちます。これはゲーム中の急な動きに反応しやすくするためで、体をしっかり固定する設計になっています。しかし、体圧分散の面ではオフィスチェアに譲る場合があり、長時間座るとお尻が痛くなることもあります。
オフィスチェアの座面は、クッション性に優れ、体圧を分散して受け止めるように設計されています。高級オフィスチェアではメッシュ素材を採用し、体重を面全体で分散させることで、長時間座ってもお尻が痛くなりにくい工夫が施されています。

作業姿勢への適応性
仕事とゲームでは、最適な姿勢が根本的に異なります。
ゲーミングチェアは後傾姿勢に適しています。コントローラーを持ってゲームをする際は、背もたれに頭を預けた後傾姿勢が主となります。ゲーミングチェアはこの姿勢でリラックスしながらプレイするのに最適化されており、長時間のゲームセッションでも疲れにくい設計になっています。
オフィスチェアは前傾姿勢をサポートします。メールのタイピングや書類作成など、仕事では頭が前方に出る前傾姿勢になりがちです。オフィスチェアの中には、座面を前方に傾ける前傾チルト機能を備えたものがあります。Boulies OP180は2度の前傾と10度の後傾が可能で、タイピング作業などで前のめりになる際に腰をしっかりサポートします。前のめりの作業でも背骨を自然な位置に保ち、腹部への圧迫を軽減するのです。ゲーミングチェアはこの前傾姿勢のサポートが弱い傾向にあります。
素材選びと通気性の重要性
張り地の特性は、快適性と耐久性に大きく影響します。
ゲーミングチェアの多くはPUレザー、つまり合成皮革を使用しています。この素材は、高級感があり手触りが滑らかですが、通気性が低いため夏場は蒸れやすいのが難点です。長時間座ると背中や太ももに汗をかきやすく、不快感を覚えることがあります。
オフィスチェアはメッシュやファブリック素材が主流です。これらは、通気性に優れ、長時間の使用でも快適です。特にメッシュ素材は体温と湿気を逃がしやすく、一年を通して快適に使用できます。エルゴヒューマン プロのメッシュ背もたれは、通気性だけでなく体圧分散にも優れており、背中の蒸れを防ぎます。

耐久性と寿命の違い
長期的な投資として考える場合、椅子の寿命は重要な判断材料です。
ゲーミングチェアの寿命は一般的に3年から5年が目安とされています。特にPUレザーは加水分解により、数年で表面がボロボロと剥がれてくるという欠点があります。ただし、BouliesやAKRacingのように部品単体で購入できるメーカーであれば、ガスシリンダーなどの消耗品を交換して長く使うことが可能です。適切なメンテナンスを行えば、寿命を延ばすことができます。
オフィスチェアは耐久性が高く、長期保証を設けているモデルが多いです。高級オフィスチェアの代表格であるアーロンチェアは12年という極めて長い保証期間を設けており、長期的なコストパフォーマンスに優れています。メッシュ素材は合成皮革と異なり劣化しにくく、フレームやガスシリンダーなども頑丈に作られているため、10年以上使用できるモデルも珍しくありません。
価格帯と投資の考え方
価格面でも、両者には傾向の違いがあります。
ゲーミングチェアは比較的手頃な価格帯から選べます。エントリーモデルは2万円程度から、Boulies Master RexやAKRacing Pro-X JPのようなハイエンドモデルでも5万円から8万円程度で購入できます。初期投資を抑えつつ、快適な座り心地を得られる点が魅力です。ただし、寿命が短めなため、長期的なコストは考慮する必要があります。
オフィスチェアは高価格帯のモデルが多いです。エルゴヒューマン プロは10万円前後、アーロンチェアは20万円以上することも珍しくありません。しかし、12年保証がついていたり、10年以上使用できる耐久性を考えると、長期的には経済的といえます。一日8時間以上座る場合、年間で割れば決して高い投資ではありません。

健康への影響と姿勢の重要性
椅子選びは、将来の健康に大きく影響します。
不適切な椅子での長時間作業は、腰痛や肩こり、頸椎の問題を引き起こす可能性があります。ゲーミングチェアの後傾姿勢は、短時間のリラックスには適していますが、前傾姿勢が必要なデスクワークを長時間行うと、首や肩に余計な負担がかかります。外付けのランバーサポートがズレると、かえって姿勢を崩す原因になることもあります。
オフィスチェアの正しい姿勢サポートは、長期的な健康維持に貢献します。前傾チルト機能により、タイピング時の前のめりの姿勢でも背骨を自然な位置に保ち、腹部への圧迫を軽減します。内蔵式のランバーサポートは腰椎を適切に支え、背骨のS字カーブを維持することで、椎間板への負担を減らします。人間工学に基づいた設計は、能動的に正しい姿勢を維持させ、長時間の集中力を支えます。
使用環境とメンテナンス
実際の使用環境も考慮すべき重要な要素です。
ゲーミングチェアのPUレザーは、定期的な手入れが必要です。乾いた布で拭き、専用のクリーナーで汚れを落とすことで、加水分解を遅らせることができます。直射日光や高温多湿を避けることも重要です。ガスシリンダーやキャスターなどの可動部は定期的に点検し、異常があれば早めに交換することで、安全に長く使用できます。
オフィスチェアのメッシュ素材は、メンテナンスが比較的簡単です。掃除機でホコリを吸い取ったり、軽く水拭きするだけで清潔を保てます。メッシュは通気性が良いため、汗や湿気がこもりにくく、衛生的に使用できます。ただし、調整機構が多いため、定期的にネジの緩みをチェックすることは重要です。

購入前の確認ポイント
実際に購入する前に、いくつかの重要なポイントを確認しましょう。
体格との相性は非常に重要です。座面の高さ、奥行き、背もたれの高さが自分の体格に合っているか確認する必要があります。特に小柄な方や大柄な方は、日本人の平均体格を基準に設計された国内メーカーの製品を検討する価値があります。可能であれば、実店舗で試座してから購入することをお勧めします。
デスクの高さとの相性も見落とせません。椅子の高さ調整範囲が、使用するデスクに合っているか確認しましょう。一般的なデスクの高さは70センチから72センチですが、椅子によって対応できる高さが異なります。モニターアームを使用している場合は、リクライニング時の視線の高さも考慮する必要があります。
部屋のスペースも重要な検討事項です。ゲーミングチェアは大型で、特にリクライニングやオットマンを展開すると広いスペースが必要になります。狭い部屋では圧迫感があったり、十分に機能を活用できない可能性があります。購入前に設置場所の寸法を測り、製品のサイズと照らし合わせることが大切です。
どちらを選ぶべきか
あなたのライフスタイルに合わせて選ぶことが何より大切です。
ゲーミングチェアを選ぶべき人は、次のような方です。後傾姿勢でゆったりとゲームをプレイしたい方、椅子の上で寝転んだり足を伸ばして休憩したい方、バケットシート特有のホールド感を好む方、派手なデザインを楽しみたいゲーマーの方に適しています。リラックスして動画視聴やゲームを楽しむことが主な用途であれば、ゲーミングチェアの深いリクライニングとオットマンは大きな魅力となるでしょう。
オフィスチェアを選ぶべき人は、次のような方です。1日8時間以上、主にタイピングや事務作業を行う方、前傾姿勢になることが多く腰への負担を最小限にしたい方、メッシュ素材による清潔感と通気性を重視する方、インテリアを落ち着いたデザインで統一したい方に適しています。腰痛や肩こりを防ぎ、正しい姿勢を維持したい方にとって、オフィスチェアの人間工学的な設計は必要不可欠です。

実際の製品例から見る選び方
具体的な製品を例に、それぞれの特徴を見ていきます。
ゲーミングチェアの例としてBoulies Master RexとBoulies Ninja Proを、オフィスチェアの例としてBoulies OP180を紹介します。
Boulies Master Rexはゲーミングチェアの代表格です。人間工学とカイロプラクティックの技術を融合した流線形デザインが特徴で、収納式のオットマンを備えており、リラックスモードへの切り替えが容易です。165度のリクライニングと4Dアームレストにより、ゲームだけでなく映画鑑賞など、椅子の上で長時間リラックスして過ごしたいユーザーに最適です。内蔵式のランバーサポートを採用している点は、一般的なゲーミングチェアより進化しています。
Boulies Ninja Proは、プロゲーマーの理想を追求した「極上の座り心地」を誇るプレミアムモデルです。高級車のシートと同グレードのブリティッシュ調合成皮革を採用しており、圧倒的な質感と耐久性を兼ね備えているのが特徴です。人間工学に基づいた3Dレーシング形状が体を優しく包み込み、長時間の使用でも自然に正しい姿勢を維持できるよう設計されています。165度のリクライニング機能と可動域の広い3Dアームレストを搭載し、ゲームだけでなく在宅ワークや学習など、あらゆるシーンで最高のパフォーマンスを支える究極の一脚に仕上がっています。
Boulies OP180はオフィスチェアの優れた選択肢です。最大の強みは前傾機能にあります。2度の前傾と10度の後傾が可能で、タイピング作業などで前のめりになる際に腰をしっかりサポートします。エラストマーメッシュを採用しており、通気性も抜群です。集中力を維持し、正しい姿勢で効率的にデスクワークを行いたいテレワーカーに向いています。

まとめ
椅子選びにおいて最も重要なのは、自分がその椅子で何時間、どのような姿勢で過ごすかを明確にすることです。
ゲーミングチェアは高級スポーツカーのバケットシートのようなもので、過酷な状況下での安定と休息を提供します。深いリクライニング、オットマン、体を包み込むバケットシート形状により、リラックスと没入の時間を最大限に楽しむことができます。一般的な寿命は3年から5年ですが、ゲームや動画視聴など、エンターテインメントを楽しむための最適な相棒となるでしょう。
オフィスチェアは高性能なオーダーメイドの義足のようなもので、あなたの動きを能動的にサポートし、本来あるべき正しい姿勢を疲れさせることなく持続させてくれます。前傾チルト機能、内蔵式ランバーサポート、優れた体圧分散により、長時間の集中作業でも健康的な姿勢を維持できます。12年保証のモデルもあり、長期的な投資として考えれば、コストパフォーマンスにも優れています。
椅子は、あなたの身体を支え、未来の健康を守るパートナーです。目先の派手さや安さだけでなく、Boulies Master Rexのように休息を極めるか、OP180のように作業を支えるか、自分のライフスタイルに最適解を求めることが、後悔しない椅子選びの第一歩となります。短時間の楽さに惑わされるのではなく、数年後の健康や作業効率を考えるなら、自身の作業スタイルを冷静に分析して選択することが重要です。
椅子の選択は、自分の体と健康への投資そのものです。正しい姿勢をサポートする椅子を選ぶことは、単なる快適さだけでなく、将来の身体的負担を軽減する賢い選択となるでしょう。より具体的な製品情報が必要な場合は、メーカーの公式サイトや実店舗での試座を併せて検討することをお勧めします。